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今月のBGM January 2022

2022年1月4日

CRANKでは毎月店内BGMを西麻布にお店を構えるQWANG(クワン)のオーナ・バーテンダー長谷川さんに選曲いただいてます。店内では、「今月の3枚」というコンセプトで毎月ご紹介いたしております。

『The Joshua Tree』

 1987年3月にリリースされたU2にとって最大のセールスを記録したアルバムです。「ヨシュア・トゥリー」とはアメリカ南西部の砂漠地帯に自生するリュウゼツラン科のユッカの木の事で、当初メンバー達はこの木のことは知らなくフォトグラファーのアントン・コービンが撮影旅行初日の夜、ボノに「とても気に入っている木があってヨシュア・トゥリーと呼ばれているんだ。これをジャケットにしたいんだ。」と話したそうです。翌日バスでカリフォルニア州道190号を走っていて、デスヴァレー近くのダーウィンの砂漠で1本のヨシュア・トゥリーを発見して撮影することが出来たそうです。冬の凍てつく寒さの砂漠での撮影は20分が限界だったそうですが、後にこの砂漠での20分間が、このレコードを物語る精神的な風景としてバンドにインスピレーションを与えたとメンバーのアダム・クレイトンは話しています。結成から今尚、不動のメンバーが奏でる美しくも激しいこのアルバムは極寒の冬の朝の澄んだ空気の中がよく似合います。

『Ella And Louis』 Ella Fitzgerald and Louis Armstrong

 エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングが1956年8月16日にハリウッドのキャピトル・スタジオで録音したデュエット・アルバムの大名盤です。バックのミュージシャンも最高でピアノのオスカー・ピーターソン、ベイスのレイ・ブラウン、ギターのハーブ・エリス、そしてドラムズのバディ・リッチ、もちろんトランペットはルイ・アームストロングです。全曲全編名曲名演ですが、エラやルイの表情やレコーディング風景が目に浮かんでくるような65年以上前の録音がとにかく素晴らしいです。トレイにCDを置き再生ボタンを押すだけで部屋が暖かくなる、そんな有難い1枚なのです。(アルバム・ジャケットのルイのソックスにも注目!)

『Here Comes The Sun』 Nina Simone

 1971年2月にニーナ・シモンが録音した全編カヴァー曲のアルバムです。もともと幼少の時からクラシック・ピアノの才能を発揮し、17才の時にニュー・ヨークのジュリアード音楽院で奨学金を受けながら1年間レッスンに暮れる日々を送り、フィラデルフィアにある音楽大学への進学を試みましたが、黒人を理由に断られるという仕打ちを受けました。公民権運動前の50年代前半のアメリカでは、黒人がクラシック音楽をアカデミックな環境で学ぶことはとても難しいことだったのです。それでもクラシック・ピアニストになる為独自にレッスンを重ねながら、生活の為に始めたバーでのピアノ演奏で店主の勧めもあって歌うようにもなりました。そんな中、57年12月にニュー・ヨークで人の勧めもあって軽い気持ちで録音したアルバム『First Recording』の中のジョージ・ガーシュイン作の「I Loves You Porgy」がヒットし本格的にシンガーとして活動していくことになりました。当時はビリー・ホリディとよく比較されることがあったそうですが、ニーナ本人は全く意に介さず自分のことはジャズでもブルーズでもないシンガーであると思っていたそうです。ジョージ・ハリスン作のザ・ビートルズの曲「Here Comes The Sun」から始まりボブ・ディランの「Just Like a Woman」へと続く冒頭2曲を筆頭に比較的原曲に忠実なアレンジで演奏しているにもかかわらず、とても新鮮に聴こえるのはやはりニーナのジャンルを飛び越えた卓越したピアノ・プレイとソウルフルでブルージィーな歌唱、壮大なストリングスのアレンジでしょうか。中でもフランク・シナトラで有名なラストの曲「My Way」での超高速パーカッションとドラム、ストリングスに乗ったニーナの歌唱は圧巻です。そうそう、5曲目の「New World Coming」は新しい年、2022年へ捧げたいと思います。Happy New Year!