モダンクラシック・カーのある生活にアテンドします。
CRANKでは毎月店内BGMを西麻布にお店を構えるQWANG(クワン)のオーナ・バーテンダー長谷川さんに選曲いただいてます。店内では、「今月の3枚」というコンセプトで毎月ご紹介いたしております。
スティーヴ・ウィンウッドが中心となって結成され1967年にデビューしたバンド、トラフィック が2枚のアルバムをリリースした後解散してしまい、スティーヴはその後エリック・クラプトンと 伝説的なバンド「ブラインド・フェイス」を結成するもアルバム1枚で解散してしまいます。21才 のスティーヴが自分の理想とする音楽を創作しようと決意し、新生トラフィックとして作られたア ルバムが70年にリリースされたアルバム『John Barleycorn Must Die』です。当初は全て一人で演 奏して作り上げようとしたらしいですが、初代トラフィックからドラマーのジム・キャパルディと サックスとフルート奏者のクリス・ウッドら盟友の二人が加わり作られました。スティーヴはオ ルガンとピアノ、ベイス、ギター、そしてヴォーカルを担当していてアルバムタイトル曲以外の全 ての曲の作曲をしています。とにかくスティーヴの才能の凄さには驚くばかりですが、ジャンル分 け不能の楽曲達とスティーヴのソウルフルな歌声で構成され、たった3人のメンバーで51年前に作 られたこのアルバムは時代を超えたマスターピースだと思います。
アメリカ・ミシシッピ出身のジャズ・ブルーズ・ピアノ奏者、モーズ・アリソンが1957年から59 年にかけてジャズ・レーベル「プレスティッジ」に録音したものからモーズが歌った楽曲だけを 集めて編集した63年にリリースされたアルバムです。モーズは幼少の時から音楽の才能に恵まれ5 歳の時には耳で聞いたブルーズをピアノで演奏できる程だったそうで、高校に入るとデューク・エ リントンやファッツ・ウォーラーを聴くようになり中でも歌いながらピアノを弾くナット・キン グ・コールにはとても影響を受けたそうです。大学在籍中に軍に入隊し専属のバンドでアメリカ中 で演奏し除隊後には、違う大学に入りなおし文学や哲学を学びました。おそらくこのことは詩を 書くことに大きく影響したと思われます。卒業後に自身のトリオ編成のバンドで南部を中心にナ イトクラブで演奏しながら作詞活動も進めていきます。モーズの詩はとてもユーモアに溢れシニ カルに世の不条理を歌っています。56年にモーズはニューヨークに渡り自身のバンドで多くのレ コーディングをこなします。しかしこれらの音楽はアメリカではほとんど話題になる事はなかった のですが、60年代後半以降になるとイギリスのロックミュージシャンが挙ってモーズの楽曲をカ ヴァーし始めます。ヴァン・モリソン、ジョン・メイオール、ザ・フー、エリック・クラプトン、 ザ・ヤードバーズ、エルヴィス・コステロ、ザ・クラッシュといった壮々たるミュージシャン達 です。1~13はモーズのヴォーカルとそれに呼応する彼のピアノが存分に楽しめる内容で、1416は モーズの的確で想像力に溢れたピアノプレイが聴けるジャズナンバー、15はピアノでもヴォーカル でもなくトランペットで渋く歌っています。
ジャズ・ピアニスト、セロニアス・モンクが1965年にリリースしたソロ・アルバムです。モンク のキャリアは1940年代から始まりチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーらと一緒にビ・ バップの創生に関わり、50年代から60年代にかけて自身のグループで多くの作品を残していま す。作曲家としても「Round Midnight」や「Straight No Chaser」など数多くの名曲を残していま す。オリジナルの『Solo Monk』はスタンダードが8曲、モンクの作曲が4曲の計12曲で今回紹介 するCDは別テイクの9曲を合わせた合計21曲です。モンクのピアノはとにかく独特で他に比較し ようがないと思うのですが、このアルバムは聴くたびに得体のわからない幸福感に自分がどんな状 態でも包まれる不思議なアルバムです。曲に歌詞が無いことが多いジャズの世界ですが、曲名を 知ってただ演奏に身を委ねたり想像を膨らまして快感を感じてみるのもいいかもしれません。