モダンクラシック・カーのある生活にアテンドします。
CRANKでは毎月店内BGMを西麻布にお店を構えるQWANG(クワン)のオーナ・バーテンダー長谷川さんに選曲いただいてます。店内では、「今月の3枚」というコンセプトで毎月ご紹介いたしております。
1969年のアメリカツアーの内、11月27、28日のマディソン・スクエア・ガーデンでの公演を収録 した70年にリリースされたザ・ローリング・ストーンズにとって初のライヴアルバムです。67年の ツアーの後、ミック・ジャガーやキース・リチャーズのドラッグの問題、69年7月に起きた創設メ ンバーのブライアン・ジョーンズの死があり2年以上ライヴから遠ざかっていた彼らでしたが、前 作の『Let It Bleed』で数曲レコーディングに参加したミック・テイラーを新たに正式なギタリス トとして加え全23公演のアメリカツアーに挑みました。それまでのライヴが出来なかった時間を 吹き飛ばす様な演奏の10曲、ミック・テイラーのギターも素晴らしく名曲6のギターソロは何度 聴いても痺れます。コンサート当時のモニター音響の調子があまり良くないのか前半3曲では チャーリー・ワッツのドラムのタイミングが少しずれて聴こえることがありますが、そこがまた かっこいいのがこの人の凄いところで、7のタイトなドラムプレイ等はチャーリーにしか出せな いグルーヴです。8「Little Queenie」が終わったところでミックから名言が飛び出します 「Charlie’s good tonight, Ain’t he?」(今夜のチャーリーは最高だよね?)。いえ、チャーリーは それまでも最高だったし、その後もずっと最高でしたよ、ミック。
アメリカ・ミシシッピ州生まれの黒人ブルーズシンガーのハウリン・ウルフが1970年にイギリス・ ロンドンに渡り当時25才のエリック・クラプトンやストーンズのチャーリー・ワッツ(ドラム ス)、ビル・ワイマン(ベイス)、ストーンズのサポートメンバーのイアン・スチュワート(ピア ノ)、ウルフを長年サポートしていたヒューバート・サムリン(ギター)らが参加したセッション を録音したアルバムです。この時ウルフは59才で体調もあまり良くなかったそうですが、彼を慕 うイギリスの白人ミュージシャン達に突き動かされるように声を振り絞って歌っているように聴 こえます。ストーンズのカヴァーでも有名な9「Red Rooster」のセッションでは明らかに不機嫌 な様子のウルフとクラプトンの会話を聴くことができます。クラプトンや他のミュージシャンがな んとか説得して曲のレクチャーを受けている音源はとても貴重ですし、次第にウルフにも熱が入っ ていく様は興味深いです。ここでのチャーリーはとてもシンプルなプレイに徹していますが、ジ ミ・ヘンドリックスの演奏で有名なウルフ作の15「Killing Floor」などでもそうですがチャーリー がドラムを叩くとブルーズもどこか独特なスゥイング感が曲に加わり新鮮に響きます。
ザ・ローリング・ストーンズのツアーメンバー、サックス奏者のティム・リースが2002~2003の ワールドツアーの空き時間を使ってレコーディングしたストーンズのカヴァー集です。ティムは 元々ジャズ畑の演奏家で音楽学校の講師でもありましたが、99年のストーンズのツアーからサッ クス兼キーボード・プレーヤーとして参加して現在に至ります。このアルバムではラストの1曲 (ティムのオリジナル曲)を除いて全てストーンズの楽曲で、それぞれの曲で奇跡のような素晴ら しいミュージシャンが演奏しています。中でもヴォーカルとピアノでノラ・ジョーンズ、ギターで ビル・フリーゼルらが参加した5「Wild Horses」は名演です。チャーリーは全部で5曲に参加して いますが、特筆すべきは2002年10月30日のロサンゼルスでのレコーディングでキースやロニー・ ウッド、シェリル・クロウらと録音した3、ロニーとシェリルが帰った後の9、キースが帰った 後の2の3曲は素晴らしい録音です。中でも2名曲「Honky Tonk Women」はオルガンとサック ス、ドラムだけのオルガン・ジャズ・トリオで、4ビートジャズのアレンジでとてもリラックスし
た演奏をしています。ジャズが大好きな事で知られているチャーリーですが、ストーンズの曲を ジャズのアレンジで叩いているのは恐らくここ以外ではありません。 最後に、たくさんの素晴らしい演奏をありがとう、チャーリー。安らかにお眠りください。