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今月のBGM March 2022

2022年3月10日

CRANKでは毎月店内BGMを西麻布にお店を構えるQWANG(クワン)のオーナ・バーテンダー長谷川さんに選曲いただいてます。店内では、「今月の3枚」というコンセプトで毎月ご紹介いたしております。

『Dreamland』 Madeleine Peyroux

マデリン・ペルーの1996年にリリースされたデビューアルバムです。マデリンはアメリカ・ジョージア州で生まれニューヨークで育ちましたが、両親の離婚で13才の時にフランス・パリに引っ越す事になりました。2年後の15才の時には地元のジャズバンドと一緒にストリートで歌うようになり、以後いくつかのグループに参加してヨーロッパを拠点に演奏をする事となりました。アメリカのレコード・レーベル、アトランティックに見出され96年にこのアルバムでデビューして、その後8年間もの間何の音沙汰も無く2004年に名盤「Careless Love」で復活してからは何度かレーベルを変えながら良質な音楽を現在まで作り続けています。本作ではビリー・ホリデイやベッシー・スミス、ファッツ・ウォラーらが歌った30~40年代の曲を中心に演奏していて、マデリンも自作の3曲を披露しています。バックで参加しているミュージシャンも素晴らしいです。ギターやドブロで燻銀のプレイをしているのは名バイプレイヤーのマーク・リーボウ、オルガンやアコーディオンではEストリート・バンドのチャールズ・ジョルダーノ、ピアノにサイラス・チェスナットといった人達のサポートを受けたマデリンのヴォーカルはビリー・ホリデイの再来と言われることが多いのですが、どこかヨーロッパの郷愁と時空を飛び越えた懐かしさがある様に感じます。

『The First Of A Million Kisses』 Fairground Attraction

イギリスのグループ、フェアグラウンド・アトラクションが1988年にリリースした最初で最後のアルバムです。スコットランド・グラスゴー出身のヴォーカリスト、エディ・リーダーは10代の頃から路上やサーカス団と共にヨーロッパ中で歌い、次第にセッション・ヴォーカリストとして評価されていきます。活動の拠点をロンドンに置きはじめた頃、ギターリストでありソングライターのマーク・ネヴィンと出会い意気投合し、ギタロン(メキシカン・ベイス)奏者のサイモン・エドワーズ、ドラムズのロイ・ドッズらとフェアグラウンド・アトラクションを結成します。小さなライヴハウスでの演奏が続きましたが88年4月に発表したシングル「Perfect」がいきなりUKチャート1位に、翌5月にリリースされたのが本作です。翌年のブリット・アワーズでベスト・シングルとベスト・アルバムを受賞して最高のスタートを切ったバンドですが同年のセカンド・アルバムの制作中に意見の相違から解散してしまいます。エディの真っ直ぐで誠実な歌唱とマークの卓越したソング・ライティング、楽曲に寄り添った最小限の演奏で構成された珠玉の14曲は、莫大な予算と物量が投入された80’sの音楽界の中では明らかに異彩であったにも関わらず、今もなお輝き続けている「宝石」の様なものだと思います。

『What’s Going On』 Marvin Gaye

当初、今月は全て女性ヴォーカルのアルバムを選択するつもりでしたが、今ウクライナをはじめ世界で起きている状況を鑑みてこのアルバムをお薦めします。マーヴィン・ゲイが1971年にリリースしたアルバムです。60年台に旺盛を極めたソウル・ミュージックはシングル曲中心の市場でしたが、このアルバム以降アルバム全体での作品作りが始まったと言われています。それまで主にソングライターから提供されたラヴソングを歌っていたマーヴィンでしたが、全ての楽曲制作とプロデュースも自分でやるという事は当時ではあり得ない事だったのです。組曲の如く美しいメロディの楽曲が続きますがそのメッセージは強烈です。反戦や貧困、差別、環境破壊、他者への愛。この場で政治的なメッセージはあまりそぐわないかもしれませんが、ソウル・ミュージックの金字塔と言われ続けているあまりにも有名な作品ですし、なにかのきっかけと思ってもう一度聴いてみてはいかがでしょうか。